MAKOTO TAKIZAWA

名 前
:瀧澤 馬琴
誕生年
:1987年10月
出身地
:長野県
活動拠点
:東京都
ブログ
瀧澤馬琴のわほめた白書
 瀧澤さんに話を聞くのは今回で2度目だ(前の紹介記事はこちら)。前回はまだモデルとして駆け出しの頃だったが、それから数年経ち自分自身や仕事に対する考えにどのような変化があったか、改めて聞いてみた。

◆支えあっての表舞台

 モデルを始めたばかりの頃、プライドのせいか人の言葉に耳を傾けない時期があった。「『私のスタンスはこれなんで違うこと言われてもできません』みたいなプライドがありましたね。ゆとり世代ですから」と笑う。
 モデルは表舞台に立ちスポットライトを浴びる華やかな仕事だ。だが、そんなモデルでありながら裏方の仕事も積極的にこなしている。 裏方は今も昔も変わらず地味でキツい仕事だが、それでも自ら進んで手を動かすのは理由がある。裏方の苦労を知ることは表舞台に立つ上でも非常に大切なことだと考えているからだ。「表方の失敗が裏方にどれだけ迷惑をかけるかを知ることはすごく大切です。そのことを知れば半端な気持ちでやれません。裏方の仕事をすることで、相手の立場に立てないことがどれだけ多く人に迷惑を掛けるか知りました」。プライドを持つことは大切だが表舞台に立てるのは多くの人に支えられているからだということを忘れてはいけないと言う。マネージャーから『プライドが邪魔して仕事が出来ていないことを自覚しなさい』と言われたこともある。たとえ辛い事があっても頑張れるのは、モデルという仕事に本気で向き合っているためなのだろう。

◆ゆるふわっも着てみたい!

 以前と比べてファッションにリボンやピンクといった女の子らしいモノを多く取り入れるようになった。「前はカッコいい男性っぽい服が多かったのですが、撮影現場などで周りの子たちが着ている赤文字系雑誌の『ゆるふわっ』なファッションを見ていて、もっと自分も着てみたいって触発されました」という。 これまでのカッコいい路線を変更して女性らしいやわらかい雰囲気に挑戦することでモデルとしての幅も広げられたようだ。自分の守備範囲を超えて様々な衣装を着れることから、ファッション系のフォト撮影は心から楽しめる仕事の1つだ。
 カメラマンと1対1でのセッションの方がリラックスして撮影に臨むことができる。「バタバタしないし、カメラマンさんとのちゃんと会話ができるのでよりよい作品づくりができます。カメラマンさんが多いとなかなかテンポがつかめなくって。相手が1人であれば向き合ってお喋りできますけど、たくさんの人がいる場ではすこし苦手かも」という。彼女のポテンシャルを最大限に引き出す鍵はマンツーマンでの腰を据えた撮影スタイルだ。

◆切っ掛けは憧れの芸能人

 モデルを始めるきっかけはSNSで誘われたことだが、この世界に飛び込む決意をさせたのは別に理由がある。高校生の頃に観た映画に出演していた俳優への憧れからだ。 「映画を観てどういう訳か『この人には私しかいない』と本気で思い込んでました。映画を観た後に何の伝手も無く衝動的に東京へ来たんです。東京に来れば会えるはずって。田舎者でしたから東京に行けば芸能人に会えると思ってました。もちろん会える訳ないですけど本当に好きだったんですね。テレビでその人の彼女を募集する企画があったんですが、年齢制限で募集条件から外れちゃって。今ならそんなの関係なく応募しちゃいます(笑)。事務所のオーディションを受けたかったけど、未成年だから親に相談しないといけない。動機が不純だし、田舎なので絶対反対される……。雑誌の切り抜きを眺めながら悶々と数年。そんな想いをしながら過ごしていたところに、モデルの誘いがあったんです」。そんな憧れは今も変わらず「もしもブライダル撮影をすることがあったら相手の花婿はその人がいいってマネージャーに宣言しています。もう結婚されてますけど(笑)」といい、野望達成の機をうかがっている。

◆ミクたん、大好きだーっ!

 「わほめた」ブログからもその変わり者っぷりがわかるが、実際に話を聞くとその数十倍も変な人である。可愛い女の子を見かければ視線が追いかけるし、脚の綺麗なお姉さんがいれば鼻の下を伸ばしてしまう。もぅおっさん、おっさんである。そのためかおじさん世代とはセクシーネタやギャグで話が弾むらしい。「以前仲居として働いていたとき、旅館のおじさんたちにお世話になりました。なかなか会う機会がないですけどね」と昔を懐かしんでいる。
 廃墟や神社、ローカル電車やアニメも好きだというのは以前の紹介で書いたが、こららに加え、最近は毒キノコにハマっているそうで、キノコの図鑑を購入したという。キノコの消費量が日本一の長野県出身というだけあってキノコに馴染みが深く、実家の庭や近くの公園に生えているのをよく見かけるという。「食べてみたいけど、いかにも毒持ってます♪って色をしているので食べられない……残念です」と悔しさを滲ませる。最凶の毒キノコと恐れられるカエンダケ。触れるだけでも炎症が起きてしまうほど毒性が強く、毒抜きもできないキノコを自らの命をはって食したキノコ教授について「凄いっすよ!ほんと!」と熱く語る。キノコへの愛情は深い。
 人から指摘されるので言動には気を使っているようだが漏れ出るオーラを隠すのは難しい。「ネットでエグいネタとかドキドキしながらも見ちゃいます。アンダーグラウンドなところとかたまりません」。ディープなインターネット生活からは抜け出せないようで夜な夜な動画サイトに入り浸っている。
 そんな彼女が愛して止まないアイドルがいる。電脳の歌姫、初音ミクである。ミクとの出会いは友人が曲を勧めてくれたことが切っ掛けだ。動画サイトのヘビーユーザーである友人は、ミクがネット上に登場して間もないころ頃からウォッチしており、メルトをはじめとするお勧め曲を紹介してくれた。「ミクたんの歌声を聴いた瞬間から……、ミクたんの姿を見た瞬間から……、私の中でミクたんは永遠のアイドルとして私の心の奥底に根づいてしまいました」。それ以降、「メルト」をエンドレスリピートしつつ「サイハテ」や「ブラックロックシューター」といった有名曲を繰り返し聴く日々が続いた。カラオケに行くと必ず唄う曲がある。「『ワールドイズマイン』を歌わせて頂いています。この曲はミクたんの曲の中でも1番大好きで、女の子の気持ちと私のわがまま加減がそっくりだなぁと感情移入してしまいます(笑)」。最近は忙しくてあまり聴けていないが、初めてその歌声を聞いたときの衝撃と感動は今後の人生ではたぶんもう感じられないだろうという。「ミク!!!!大好きだーーーーーっ」。

◆モデルという枠に捕らわれず

 開業目前の東京スカイツリー周辺の下町で、ポートレートの撮影があった。 「ああいう下町の商店街のお店って何でもあるし、すっごくお買い得なところがいいんです。東京なのに電車がローカルで2両編成だし(笑)。なんだこりゃーって」と楽しそうに話す。下町が持つノスタルジックで哀愁漂う街並みは心が落ち着くという。
 近頃は昔のドラマをよく観ている。「売り出したいタレントに重要な役を当ててタイアップを狙う戦略のせいか、最近のドラマは物足りない感じがします。でも以前のものは、演技力があり、役に合う俳優を起用しているように思います。だから演技の勉強になるんです」。モデルだけでなくラジオのMCや映画にも出演がスケジュールされており、単にドラマを楽しむだけではなく実益を兼ねているようだ。また普段から洋画を観ている。英語を聞き取れるようになるためで、観るというより聞き流すに近い。しかし、お気に入りの洋画ばかりを見ているために耳に慣れさせるつもりが映画に見入ってしまうためなかなかヒアリングは進まないようだ。
 神社仏閣の厳かな空気が好きなこともあり、古い建築物が多くある京都は一番好きな旅行先だ。そんな京都で、機会があれば一泊十万円以上するような高級旅館に宿泊してみたいという。「以前、旅館で仲居として働いたことがあるので旅館の対応が気になります。一流旅館であれば宿泊客が求めるサービスのレベルも相当だろうと思います。そんなお客さんのクレームにどのように対応するんだろうとか興味があります。相手あってのお仕事ですから。お客としても高級旅館が提供するおもてなしを体験してみたいですし。あとはディズニーリゾートのミラコスタかな。毎年たくさんの宿泊客がいるのに口コミの評価が五つ星ってすごいですよ」。単なる趣味ではなくユーザーを満足させるため、さらにサービスのレベルを上げようという思いの表れなのだろう。
 視野を広げるためいつも何かを探している。資格雑誌をめくりながら探しているのはこれまで自分に無い新しい領域だ。「ファッションやコスメだけじゃなく、幅広い知識と技術を身に付けたいです。国家資格といったガチな資格です(笑)。ただ、勉強にはお金も時間もかかるので、のんびりになっちゃいますけど」。マイペースながら一歩ずつ、モデルという枠に捕らわれず人としての成長を続けている。

◆夢に向かって頑張って欲しい

 東京に出て数年。もっと東京に友人が欲しいという。学生時代を一緒に過ごした友人は皆地元の長野におり、「帰省していた時、ふと海に行くことを思い付いて行っちゃったりするんです。何の計画もしていないのに奈良への旅行することになって、車で12時間も走ってみたりと行き当たりばったりなんですが、すっごく楽しい仲間です。絵本作家、舞台役者、デザイナーと、みんな自分の夢に向かって頑張って欲しいです」と自分の夢のように話す。
 軽いお喋りからからディープな話題まで話の尽きない人だ。
 周りからは『喋らなければカッコいいイメージのままでいられるのに』と言われていることについては自覚もあるらしく気を付けてはいるようだが、抑えられないそのノリの性で、なかなか思った通りにはいかないようだ。
 以前と比べ落ち着いた様子もあるが、前向きな姿勢と子どものような好奇心に、どうにも予想外な展開を期待せずにはいられない女性だ。

2012.05.01 二つ木