MIKI SATAKE

名 前
:佐竹 美紀
誕生年
:1990年9月
出身地
:岩手県
活動拠点
:東京
ブログ
ミキ☆ブロ

◆雰囲気を変えられる

 インタビューのこの日、ストローハットにポンチョ風の服装で現れた美紀さんは「今日はギャル系ですね」といいながら、軽快な挨拶をしてくれた。
 どう言う訳か自分のことを幼い頃から芸能界で活躍する人間だと思い込んでいたというから、今は目標への道半ばなのだろう。モデルとして働くようになったのは原宿を歩いていた時のスカウトが切っ掛けだそうだ。
 携帯電話のメモリには仕事の様子が多数収められている。「本当の私に反してモデルの仕事では森にいる女の子っぽい衣装が多いです」。もっとアクティブな性格だといいつつも衣装だけでガラッと雰囲気を変えられるモデルという仕事を楽しんでいる。「一番受けがよかったのは和服でお茶の宣伝している写真です」と差し出した携帯に映っていたのは、赤い和服でお茶を携えホッコリ微笑んでいる美紀さんの立ち姿だった。

◆幕末って面白い

 携帯電話には日本刀の鍔(つば。刃と柄の間にあり手を守る部品)のストラップが下げられていた。 小学校6年生の時、父親の仕事の関係から香港で暮らすことになり、そこで唯一観ることができたチャンネルがNHK-BSだったという。「香港でBSの新撰組を見ていたんですよ。で、それを友達に話したら『新撰組異聞 PEACE MAKER』っていう漫画を薦められてそこからですね。新選組にはまっちゃいました」。憧れの人は新撰組で鬼の副長として恐れられた土方歳三だ。
 どんな境遇にあっても義を尊び信念を貫き通す姿に感銘を受けるそうだ。「ほんと幕末って面白いですよぉ」と言いながらカバンから取り出した本は半藤一利の「幕末史」だった。現代はまるで動乱の幕末のようだという。「ペリー提督が開国を迫ってきた国の存亡のかかっているときに幕府の中でやっていたことは誰を将軍にするかで大騒動ですよ。東北の震災で一刻も早い対応が必要な時に首相をどうこう言っているんですから」と、派手な服装とは裏腹に世の中について彼女なりに考えているようだ。
 ちなみに携帯の鍔は沖田総司を語る人なら誰もが知る菊一文字のものだ。

◆外から見える自分と本当の自分

 自身のブログでも書いているように精神の病気を抱えている。 小さい頃からテレビで活躍する将来を考えていた一方、もともと見た目が大人しいこともあり、周りからはあまり喋らない子として見られる自分に憤りを感じていたという。そんな性格を変えたくて香港で暮らすのを機に日本人学校ではありのままの自分を出すことに努めたという。環境もよかったのかクラスの友人とはすぐに打ち解けることができた。素直な自分でいれて、すごく楽だったと語る。
 しかし、帰国後に通った日本の高校ではそうはいかなかった。「人って見た目で判断するところがあって、特に日本では強く感じます。派手な感じの子たちだけでグループを作ったり、大人しそうな子たちだけで集まったり。うちはそんなつもりはなくても大人しい人に見られるのかな」と、本当の自分と周りからの評価とのギャップに苦しんでいた。

◆目には見えなくとも

 初めは心の病気を認められなかったという。「高校1年生のときは自分が病気であることを認められなかったですね。怪我みたいに傷がみえるものじゃないし、精神病に対して偏見を持っていたのかもしれない。でも3年の頃にはどうにも辛くてカウンセリングに行きました。そんなときだったかな。同じ様な病気を持った人のブログを見たんです」といい、そのときから病気と向き合うようになれたそうだ。
 病気のことをブログに書くのは、同じ苦しみを持つ人や健康な人にも病気のことを知って貰いたいからだ。「病気になった人にしか分からない辛さがあるんです。怪我じゃないから健康そうに見えるかもしれないけど。混み合う電車がつらくて立っていられないこともある。お年寄りを前に若くてギャルっぽい子が優先席で座ってたら、『こいつ立てよ』って思いますもんね(笑)」。
 目には見えなくとも心の病気に苦しんでいる人がいる。そのことを知って貰うためにもブログに書くのだという。

◆ミヤオとflumpool

 今がんばれているのは日本人学校時代の恩師、宮尾先生のおかげだ。日本に戻ってからも時々連絡がある。「年賀状でミヤオに病気のことを軽い感じで書いたんですよ。そしたらすごく心配してくれて」。恩返しになるかは分からないが、乗り越えられる目標を定め、一つ一つクリアしていくことで頑張っている自分を見せたいという。
 もう一つの心の支えが、4人組バンドのフランプール(flumpool)だ。「病気で苦しんでいた時にflumpoolの『Over the rain~ひかりの橋~』という曲を知りました。間違ったり傷ついたりすることがあってもいいって感じで、それも自分の一部だと思えたんです」。いつか彼らの前に立って歌に救ってもらったことを伝えたいという。「でも本当にそうなったらキャーとか言っちゃいそう(笑)」。

◆幸せほっぺ

 病気のためかペンで文章を書くことに恐怖を覚えるという。病気の症状は人によって異なる。美紀さんの症状は一度やったことでも不安になり何度も確認してしまうことだ。そのせいか2度書きを繰り返すなど、文章を書くことが苦痛なのだという。
 そんな美紀さんだが心の調子が良いときには筆を持ち文字を書くことがある。昔書道を習っていたことがあり、「うまく書けると病気になる前の自分みたいで嬉しくなると言うか…書けたぁ!!って嬉しくなるんです♪」と話す。 時が経つことで嫌いだったことを許せるようになることもある。
 ほっぺだ。笑ったときにマシュマロのように現れるほっぺ。過去の写真を眺めていたときに気が付いた、「私のほっぺすごくね?」。そこでこのほっぺの名前をブログで募集したところ多数の案があがり、最終的に『幸せほっぺ』で決定したという。「このほっぺにふれると幸せになれるみたいですよ」とまんざらでもない様子だ。
 心に病気を抱えつつも、それも自分の一部として受け止める。「同じ境遇の人にもっと楽になってほしい、応援したい」。物怖じせずに笑う美紀さんのほっぺはみんなに大きな福を運んでくれることだろう。

2011.07.09 二つ木